■被告
■返還
■初年度
初年度の所得に基づく援助金の不支給率を推計 の根拠とする原告の推計方法に対し,返還初年度の世帯最多所得が返 還義務者の将来20年間の世帯最多所得のピークであると主張する が,結婚等による世帯分離までの期間は様々であり,かなりの世帯の 親(世帯の最多所得者)の収入は,子どもの学卒後も相当期間増加す るケースも少なくないことからすれば,根拠が無い決め付けにすぎな い。
(イ) さらに,同和奨学金の返還免除制度については,初年度の後も5 年毎に申請の機会が与えられていたところ,京都市においては,所得 - 27 - 調査をして申請するのは初年度だけとされ,それ以降は免除申請自体 が懈怠されてきた。
すなわち,返還初年度に免除となれば5年間免除 の扱いを受けるが,その後15年間は,当然免除を受けられる者も, 誰一人免除されていないのである。
免除されるべきケースは,免除の 申請をすれば確実に援助金の支給対象外となるわけであるから,その 全額が丸々損害となる。
同和奨学金制度の通常の扱いどおり5年毎に 免除制度を利用していれば,初年度における割合と同じ割合で,返還 の免除を受けることができたものと考えられる。
原告の損害主張は, これを考慮せずに算定しており,この点でも控えめである。
ウ被告の損害算定式の誤り 被告は,損害算定に当たって,支給対象外となるはずの額に,京都市 の同和奨学金借受者の住所確認率66.9%を乗じて,さらに日本学生 支援機構の奨学金返還金の回収率である77.9%を乗じている。
しかし,まず,日本学生支援機構における奨学金返還金回収率の中に も住所確認ができずに回収できないケースが考慮されており,これを二 重に考慮することになっており失当である。
さらに,そもそも回収できなくても債権は直ちに消滅しないから,損 害を回収可能な範囲に限定することには理由がない。
以上,被告の損害算定式は,こうした技術的な点においても誤ってい る。
エ民事訴訟法248条の適用について 民事訴訟法248条にいう「損害が生じたことが認められる場合」と いうのは,損害発生の事実及び行為と損害との因果関係の存在が自由心 証主義の一般原則に従って認定される場合であるとされている。
本件は,一般住民である原告が住民訴訟という方法によって違法な公 金支出の是正を図ろうとしているものであって,原告には全くの第三者 - 28 - である奨学金返還対象者の所得を調査できる手段・方法は存在しないの であるから,まさに本件における京都市の損害は,損害の性質上,立証 が極めて困難な場合に該当し,法248条が適用されるのである。
そして,調査権限を有している被告が返還初年度の支給対象外額を明 らかにしていない以上,一般住民である原告はその金額を調査すべき手 段が存在しないのであるから,被告が明らかにした返還初年度の支給対 象外率を基にして損害額を算出することは,法248条の認めるところ である。
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(被告の主張1 原告の主位的主張に対する反論) 本件援助金の支出は適法な支出であるから,京都市に損害は生じていな い。
仮に本件援助金の支出に違法があるとしても,京都市の損害は,下記 被告の主張2のカ記載の範囲に限定される。
(被告の主張2 原告の予備的主張に対する反論) 原告は,被告が,同和奨学金の返還初年度者について,仮に行った援助 金の支給判定結果を基に,その他の援助金給付申請者に対して支給した援 助金に係る損害額を推計するが,原告が主張する損害額の計算は,下記ア ないしオ記載のとおり,その内容に合理性があるとは考えられず,原告の 主張する損害が生じたと認めることはできないというべきである。
ア返還対象者の属する世帯の世帯構成,最多所得者の所得,就労等の援 助金支給判定において判定の基礎となる生活実態は,常に一定のもので はなく,各々が不確定な要因に基づき年々変動する。
すなわち,援助金の支給判定は,世帯の独立・世帯構成の変化・所得 の変動といった,相互に相関関係がなく,しかも年々変動する多数の不 確定要素を基礎とするものである。
これに対し,原告は上述のような多数の変動する不確定要素が20年 間全く固定化して変動しないとの立論に基づき,同和奨学金の返還初年 - 29 - 度に当たる援助金支給申請者のうち支給対象外となる者の割合を,すべ ての援助金支給申請者に当てはめて損害額を推計しているが,かかる手 法はあまりにも乱暴であり,それ自体,不自然かつ不合理なものであり, 原告の主張する損害額の推計方法が採用し得ないことは明白である。
イさらに,被告が行った試算の対象となった同和奨学金の返還初年度者 は,前年度は学生であったため,前年度は所得がないか,あってもわず かな額であるのが通常である。
そして,改正後要綱に係る基準では,援 助金の支給判定は,本人の所得ではなく,本人の属する世帯の最多所得 者の所得で行うものとされているため,同和奨学金の返還初年度者につ いては,本人ではなくその親の所得で判定することになる。
ところが,返還2年度目以降の対象者に関しては,就職や結婚によっ て子供が親の世帯から独立して別世帯となることが予想されるなど,い つまでもこのような前提条件が維持されているわけではない。
このように,返還初年度は,我が国の賃金体系上,生涯のうちでも高 い所得を得ている時期にある親の所得を基準として援助金の支給判定を 行っているわけであるから,統計学的に言えば,同一年度の返還対象者 のグループを追跡検証した場合,全体で20年にわたる返還期間の中で 返還初年度は,支給対象外となる金額が一,二を争う高額となる年度で あると認められるというべきである。
そして,返還の初期段階を過ぎている返還対象者について,平均的な 世帯像を仮定し,各年齢別に仮想的に所得判定を行ってみると,各年齢 すべてで支給対象と判定されるように(乙16),平均的な世帯であれ ば,十分,援助金が支給されるものである。
したがって,仮に京都市に損害が生じていると仮定したとしても,親 の所得を基準として援助金の支給判定を行っている返還初年度のデータ を,その後の20年の返還サイクルのすべての期間において固定化して - 30 - 用いるという原告らの推計手法は,実際に生じた損害以上に誇大な金額 を算定していることとなることは明らかである。
ウ就学奨励金の返還初年度者に係る支出額推計について また,同和奨学金制度と就学奨励金制度のどちらが適用されるかの判 断は,大学卒の返還対象者の場合,4年前の大学入学前,又は,進学に より返還を猶予されていた場合7年前の高校入学前の親の所得を基に行 っている。
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